会社員

2018年7月9日(月)

会社員 馬場大宣

 バブル崩壊後の就職氷河期を経験した〝失われた世代〟。企業は新卒採用をしぶり、リストラや倒産、不良債権が社会に暗い影を落としました。経済的な事情もあり進学をあきらめ、上京したのは10数年前。6つ歳上の説さんと出会ったのはその頃です。

 説さんは、ひととの結びつきを大切にします。声をかけ、気にかける。存在を無視されないことで、どれほど救われたでしょうか。家族や友人をつくることが、いまや手の届かない夢にさえなっている。孤独がひとを死に追いやるほどの日常を、だれもが耐えています。

 東日本大震災の津波で近しい人を亡くしました。郷里の岩手県大船渡市にとどまる仲間らは不安定雇用に身を置きます。生まれた環境が人生のおおくを決定づけ、主人公である本人が生き方を選べない。そんな矛盾は極限の被災地でより深刻に表れていると感じています。

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