区立図書館の委託化について。

2018年10月28日(日)

 

区立図書館全12館のうち9館は、すでにその運営を民間事業者に委託(指定管理)しています。しかし、残り3館については、中央館的役割を担わせるとして直営3館体制を維持してきました。

区はいま、直営館のうち石神井図書館と練馬図書館にも指定管理制度を導入しようとしています。その理由は、「区を取り巻く社会情勢が変化してきた中で、区民サービスの充実を図るうえで有効である」というものです。

直営3館体制の役割は、図書館法、教育基本法、社会教育施法を踏まえ、長期的な区の方針を策定すること。それにもとづき指定管理の指導・監督、12館すべての蔵書の管理、職員の育成、またそのための予算・決算の作成、契約、困難事例などへの対応やレファレンスを行うなど多岐にわたっています。

中央館的な機能を持つ光が丘図書館では、各館の選書や廃棄をチェックし、指定管理館のモニタリングが行われています。石神井図書館では、常勤職員の研修が行われ、練馬図書館では、職員の専門性を活かしたレファレンスの調査・回答業務を行っています。また困難事例が起きれば3館で検討し、区の方針を決定するということも行われてきました。

区もこれまで指定管理館の導入にあたって、直営3館体制を提案し、その際、図書館行政が歪められないためとして「委託施設におけるサービス水準と施設管理を確保するため…適切な指導監督する体制づくりが必要。区職員が図書館業務の運営に係るノウハウを引き継いでいける仕組みを作ることが不可欠」と3館体制の意義を強調してきました。

もし2館に指定管理が導入されればどうなるか。石神井図書館で行われている職員研修が失われ、高いスキルによって支えられてきた練馬図書館のレファレンス機能が失われてしまいます。困難事例も含めた3館における多角的な検証もできなくなってしまいます。

図書館業務は、スキルの習得に長い年月を要します。レファレンス業務では、本のタイトルやキーワードを検索しても1文字でも違えば検索されません。専門員は、相談者の意図を理解し、そこから様々な資料を類推していきます。そのために専門員は窓口業務などで区民の興味関心をつかむとともに様々な分野に興味を持つことが必要で、休日も見聞を広めるために美術館など様々な文化施設に足をはこぶ努力をしています。

練馬区立図書館は昨年度、11万冊以上の図書購入をし、10万冊以上の図書廃棄をし、1万3542件のレファレンス業務に取り組みました。この数を1日換算すると図書購入については1日303冊、廃棄は1日278冊、レファレンスは1日37件という恐るべき仕事量です。図書館業務のなかでも、とりわけ選書と廃棄、レファレンスは高度な技能を要する専門業務であり、これらの業務の中核を担ってきたのが非常勤で働く図書館専門員の方々です。

ところが指定管理館ではこうした経験を積むことすら困難な状況にあります。職員や責任者が頻繁に代わり、着任した数か月後には新しい図書館に配置転換されてしまうということも少なくありません。茨城県守谷市では指定管理を導入してわずか2カ月で館長と職員計6名が退職するという事態が起こり、その結果、市長は「図書館は民間委託はなじまない」として、「直営に戻す」と表明しました。

事業委託の際には1年から5年ごとに再契約が必要ですが、継続に失敗した事業者は図書館運営で得たノウハウの他事業者への引き渡しを好まず、見学などで訪れた他事業者に対しても蓄積した情報を開示しないなどの態度をとったようです。さらに直営館との連携や意思疎通の不備などから、指定管理館が高額のシリーズ本を廃棄してしまったという事故を起こしたとも聞いています。

区民サービスの一層の向上というのであれば、区が進める2館への指定管理館の導入を見直すとともに、むしろ直営3館による中央館的や役割を充実させること、図書館法に記された図書館協議会の設置こそ必要だと思うのです。